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IR担当者向けセミナー IR説明会で意識すべき「3Dモデル」とは 後編

価値協創ガイダンス2.0をはじめ、近年では企業と投資家との
実質的な対話が必要であると示されていますが、
対話の機会を「もっとつくりたい」「改善したい」とお思いの一方、
その実践となると課題や困難も多いのではないでしょうか。

今回は、年間300を超える決算説明会のご支援をしているリンクコーポレイトコミュニケーションズから
決算説明会の「本質」から「これから」を紐解くセミナーを開催いたしました。

本記事は前回寄稿したセミナーレポートの後編です。

■登壇者紹介

株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ
公表領域企画室 室長
一瀬 龍太朗

2010年、株式会社リンクアンドモチベーションに新卒で入社。
主に財務会計・管理会計といった側面から経営企画業務に従事し、中期経営計画、IR、M&Aといったテーマに取り組み、全社MVPを受賞。その後同社IR・PR部門を統括。
社内を巻き込む「全社一丸IR」を推進し、2年で株価10倍を経験。
2019年1月より株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズにて営業企画ユニットマネジャーに就任。2023年1月より現職。

株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ
インベスターコミュニケーションカンパニー カンパニー長
佐々木 慎

10年間の放送局勤務を経て2012年リンクコーポレイトコミュニケーションズ入社。
以来IR説明会を中心とした動画配信事業に従事・事業責任者を務め、
コロナ禍以降は企業のIR説明会や株主総会などのオンライン化に貢献。
2023年1月より現職。
デジタル技術を使って効率的・効果的に企業と投資家の対話の機会を実現する。

目次[非表示]

  1. 1.マーケティング思考のIRコミュニケーションへの応用
  2. 2.IRコミュニケーションの「誰に」「何を」「どのように」
    1. 2.1.「誰に」
    2. 2.2.「何を」
    3. 2.3.「どのように」
    4. 2.4.IRコミュニケーションの「誰に」「何を」「どのように」まとめ
  3. 3.IRコミュニケーションを実現する IRダイアログとは
    1. 3.1.IRダイアログの概要
    2. 3.2.特許を取得している独自の「リアクションボタン」
    3. 3.3.リアクションレポートによるPDCA支援
    4. 3.4.独自データベースによる集客支援と配信形式
  4. 4.セミナーの最後に 私たちの想い

マーケティング思考のIRコミュニケーションへの応用

一瀬:ここからは少しマーケティングの思考を活用し3Dと掛け合わせながら考えてまいりたいと思います。まずはIR活動以外の企業活動におけるマーケティングを少し参照しながらIRを相似形で捉えていくということをやっていきたいと思います。

まずCRの活動ですね、カスタマーリレーションということで商品サービスを顧客消費者にどのように届けていくかという、リレーションの図です。見込み顧客(リード)をまず作っていくというところで言えばリードジェネレーションという認知活動があり、見込みリードに対してリードナーチャリングというお客様を育てる文脈が続きます。マーケティングと言われる部分は特にこの前半のプロセスがよく示されるかと思います。マーケターやインサイドセールスというチームが多くの企業様で立ち上がってるというのもマーケティングを重視した動きと言えるでしょう。

CR活動は対消費者やお客様向けではありましたが、このER(エンプロイーリレーション)の領域、つまり採用活動においても、このマーケティングというものが最近ではかなり活用されてきているかなというふうに思っております。

採用というと応募していただいた方の選考をしながら内定を出していくというプロセスがまず想起されると思いますが、まずそもそも応募をしていただける状態をつくり、その母集団形成あるいは欲しい人材にアプローチをしていくところが重要です。そういう意味でのリードジェネレーションそしてリードナーチャリングというところも採用マーケターの仕事になってきているといます。

こういったステークホルダーの意思決定の手前側のマーケティング活動をIRにも応用していこうじゃないかというのが今回の趣旨です。伝えたい人に伝わるメッセージを届けるということではこのIRのマーケティングの伸びしろというものが非常に大きいと思っております。

IRコミュニケーションの「誰に」「何を」「どのように」

ではこのマーケティング思考を踏まえて、IRコミュニケーションを「誰に」「何を」「どのように」という構造で分解して一つずつ見ていきたいなと思っております。まずどの投資家にアプローチをするのかというこのターゲティングを考える必要がありますが、細かい分類いろいろあるものの、一般的にはまず最初に機関投資家にアプローチするのと、それとも個人投資家中心にIRをやっていくのかというところを意識してIRの施策を検討していくパターンが一般的かと思います。これも当然必要なことですし、大事だなと思いますが、違った見方、違う眼鏡をかけて捉えるということもできるのではないかと思います。

「誰に」

機関投資家か個人投資家か、という分類は「属性」による分類です。しかし同じ属性の中にも様々な投資家がいます。投資のスタイルの違いなどでさらに細分化もできますが、投資家と企業との間にある関係性の強弱に注目し、「エンゲージメントのレベル差が存在する」というふうに捉えると、どのエンゲージメントレベルの投資家ターゲットに当たっていくのか、という発想が生まれるのではないかと思います。

どういうことかというと、発行体の企業のことをよく知る投資家と全然知らない投資家がいるということになります。結論から言うとその全然知らない投資家を無視するのではなくそこにもちゃんとアプローチをしてその中から共感していただける投資家を、獲得をしていくというIRも必要ではないかと思っております。

通常の決算説明会をやると、エンゲージメントレベルの高い、つまり企業の理解度が高く情報蓄積もかなり進んでいる投資家にアプローチしていくことになります。そういう投資家に向けて引き続き情報提供し、決算のアップデートを説明していくということは大事なことではありますが、それをずっとやっていると、新規投資家といつまで経っても会えないわけなんですね。エンゲージメントレベルが低い層に対象をもっと広げたときに、「名前だけは知ってる」という方や、「いやそもそも名前すら知らなかった、そんな会社存在するんだ」という投資家さんがかなり多くいらっしゃるわけですから、そこにですねアプローチをしていくようなIR説明会が有効であると考えています。なお、ここではあえて「決算説明会」ではなく「IR説明会」に言葉を変えています。

決算説明会は多くの企業様で定期的な頻度で実施されていらっしゃるかと思いますが、マーケティングフェーズまでIR活動を広げていくと、必ずしも「決算を説明する会」である必要はないかと思います。エンゲージメントレベルがまだまだ低い投資家たちにアプローチをしていく際には「決算説明会」ではなく「IR説明会」であるべきではないでしょうか。

まとめますと、まず「誰に」という観点に着目しましたが、属性で見るのではなくエンゲージメントのレベルで見ていき、新しい投資家に開示内容をDeliverしていきましょう、というのが提案でした。

佐々木:私も、決算説明会という場が非常にもったいないなというふうに思ってるところがありまして、やっぱり機関投資家向けというのがセオリーといいますか、プロ向けにクローズドに開催していくことが一般的と思われてる方も少なくないと思います。しかし、決算発表は上場企業約3800社の中から投資家の皆さんに注目してもらえる機会だと思うのです。

そういった意味で言うと機関投資家の方々だけではなくて、もっと広い投資家の方々、例えばわかりやすいところで個人投資家の方々にも自分たちのところを見てもらうというオープンで能動的な機会にできると良いと考えています。

「何を」

一瀬:エンゲージメントのレベルがまだ低い投資家に接点を持ちに行くということを考えていくと、「何を」伝えていくんだろうかというところも変わってくると思います。先ほど決算の説明会じゃなくてIR説明会に変わっていくんではないかというところにも少し連動する話ではありますが、この「出会う」のフェーズの投資家の心理はどうなっているのかと、何を考えているのか、というところがポイントとなります。このフェーズの投資家は次なる投資のネタやチャンス、あるいは宝探しをしてるような、そういう気持ちだと思います。

何か新しい出会いはないか、数多くの情報がある中でピンとくる銘柄企業を発見したいということで情報収集をされていらっしゃるかなと思います。これは個人投資家だけでなく機関投資家も同じだと思っております。

ですので、このフェーズの投資家にアプローチをするのであれば、その財務情報を事細かに説明していること自体が、本当に最適なのかという話になってくるわけですね。必ずしもそうではないでしょう。ちゃんと投資家のアンテナに引っかかるようなアプローチを合理的に訴えるだけでなく情理的にも訴える、要は投資家心理に響いてくるようなそういった情報提供をしていく必要があるかと思います。

なので企業プロフィールをはじめとした合理的な情報提供に加えて、何が面白いのか、どこに興味を持って欲しいのか、といったところを出会いのフェーズでは訴求をしていくということが重要になってくるかと思いますし、必ずしも全てを伝える必要はないということですね。アピールポイントを明確にしていきましょうということになります。

この「何を」のところで合理軸・情理軸というキーワードを出させていただきましたが、その要素としては様々な観点があります。合理的な部分では、経営戦略や事業計画、マーケットの状況といったものもありますし、情理軸はより見えない非財務資本といいますか、未財務の情報が多く含まれます。

こういった要素も投資家の期待を作っていくと思っていますので、カルチャーや経営哲学あるいは人的資本のエンゲージメントの高さといったものも重要な訴求内容になってきます。

「どのように」


では、「どうやってやりましょう」ということですけれども、Deliverの観点とDialogの観点でやり方を工夫していく余地があると考えています。Deliverはやはりその届けたい情報、これがちゃんとターゲットに届くように投資家の開拓を進めていくということになります。

投資家のデータベースは、上場企業それぞれがSNSなどの活動を通じて自社の中で構築をしても良いと思いますが、世の中には既に投資家データベースがありますので、そういったものをちゃんと活用していくということも非常に重要かなと思います。そのデータベースからちゃんと集客をしていくということですね。

もう一つはダイアログということで投資家の声やリアクションこういったものを獲得できる仕組みを構築しておくことがポイントです。説明会をすると同時に声やリアクションが跳ね返ってくるような状態にしておくこと。これが実現できればIRの3Dモデルがワンストップで実行できるような状態に近づき、IRのPDCAサイクルを回すことができるようになります。

IRコミュニケーションの「誰に」「何を」「どのように」まとめ

【IRコミュニケーションの要素分解とポイント】
➢誰に :エンゲージメントの違いに着目しアプローチを広げる
➢何を :投資家のアンテナに引っかかる魅力を合理軸に加えて情理軸でも訴求する
➢どのように :投資家データベースの活用と、フィードバックをもらえる仕組み作り

IRコミュニケーションを実現する IRダイアログとは

IRダイアログの概要

佐々木:ここからは当社サービスについて少しお話をさせていただきたいと思います。私たちの思いは「投資家の反応を定量的に可視化することで対話および改善への力になりたい」ということです。従来の説明会では50分ぐらいプレゼンテーションして質疑応答をやって終わってからアンケートにお答えいただく流れが多いと思いますが、視聴者が1時間前のことを鮮明に覚えてない場合もあり、印象的な感想を書いていただくことはあっても、その反応を定量的に測ること難しかったと思います。

そういったところを何か改善していけないかというふうに思いまして、投資家の反応を見える化する商品開発をさせていただいたのが、このIRダイアログという「投資家の感情を可視化するオンライン説明会」です。

特許を取得している独自の「リアクションボタン」

オンラインの説明会の配信画面にリアクションボタンを設置することで、IRの説明会内容に対して投資家の反応をリアルタイムで計測することができます。「へえ」と思ったらボタンを押す番組が昔ありましたけども、そのような要領で押していただいたリアクションを集計し、可視化します。

今回のセミナーも実際にリアクションボタンを設置して配信していますが、私や一瀬の話がよくわからない、という部分については私たちが後ほど確認させていただき、改善の手がかりにしていきます。この機能は特許を取得しておりますので、私たち独自のサービスとして展開させていただいております。

リアクションレポートによるPDCA支援

実際にボタンを押していただくと、このような形でリアクションレポート(共感度グラフ)という形で表現することができます。ポジティブなリアクションを押していただいたところは、上に凸の赤い山として表示され、逆にネガティブだった部分は下に凸の青い山として可視化しています。

特にリアクションが大きかった部分などについては、スライドベースで定性分析もご報告させていただいています。この結果をうまく活用していただいてPDCAを回していただくということがこのIRダイアログというサービスのコンセプトです。

独自データベースによる集客支援と配信形式

なお、IRダイアログには、集客機能があります。私たちが保有する30代~50代を中心とする約50,000名の個人投資家データベースにアプローチをすることで、説明会に集客いたします。

実施方法としてはライブ配信形式とオンデマンド配信形式(事前収録)の二つがございます。ライブ配信は日時が決まっていますが質疑をリアルタイムで行うことができます。現役世代の投資家向けなので、平日夜開催を推奨しています。オンデマンド配信配信形式であれば、リアルタイムの質疑応答はできないものの、投資家がいつでも視聴することができるメリットがあり、時間を選ばず視聴できる点で投資家からも好評いただいています。

またオンデマンド配信版は、撮影収録のタイミングを調整しやすいという企業様のメリットもあります。収録後に編集が可能な点も安心ですし、収録環境の調整もライブ配信ほど複雑ではないので非常にやりやすい手法です。オンデマンド配信でもリアクションの集計は可能であり、映像公開後にリアクションレポートをご提出する流れとなります。
このように説明会の実施方法として選択肢が広がったことで、お客様からもご好評の声をいただいています。

オンラインですと相手の顔が見えないことで説明会の手触り感がなくなってしまいましたが、「伝わっているつもりになっていた部分に気づくことができ非常によかった」とおっしゃっていただくケースもございました。また機関投資家向けの決算説明会を個人投資家向けに利用した場合に関心のポイントが違うということが明瞭にわかってきます。

セミナーの最後に 私たちの想い

佐々木:サービスの紹介は以上となりますが、改めて私たちの想いをお伝えいたします。企業の皆様にとってアドオンの施策でさらに負担が増えてしまいますと、なかなかIR施策を拡充するのは大変だな、という話になってしまうと思いますので、「今あるものをうまく活用していく」ということが大事かなと思ってます。今やってることに「+(アドオン)」ではなく「&(アンド)」にしていくことが大事かなと思います。こうした現実的なスモールステップによって本質的な資本市場の対話を活性化させていきたいと思っています。

一瀬:このIRダイアログというサービスは、私も企画開発に関わらせていただいてましたが、元々IR担当をしていた時に、説明会の改善が属人的で感覚的な対応にどうしてもなってしまっていましたし、投資家から自社がどのように映っているのか、もっと解像度高く把握をしたいという思いをサービスに反映しています。

そのような背景から魂を込めて開発に至ったのがこのIRダイアログという新しい説明会の手法になっております。特に中堅企業様あるいは成長企業様に、是非多く使っていただきたいと思いますし、資本市場と上場企業との関係性あるいはその距離感というものをもっと近づけて密なものにしていきたいと思います。それが日本経済や資本市場の活性化に繋がると私は思っています。

日本の個人の多くの金融資産が現預金のままになってる状況が変わり、もっと企業と近くなることによって期待をしながら投資をするという文脈が作れれば、この資本市場というマーケットはかなり動いていくのではないかと思います。これまでのIR施策を継続しながら説明会の映像を、IRサイトにアーカイブをしていくことを続けるのであれば、ぜひ3Dを&(アンド)で実現できるIRダイアログをぜひお試しいただければと思います。

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