従業員エンゲージメントと投資指標の関係性についての
調査レポートを公開

株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズのグループ研究機関であるモチベーションエンジニアリング研究所は、「従業員エンゲージメントと投資指標の関係性」に関する調査を行いました。当社代表の白藤が発行責任者を務めましたので、結果を報告いたします。

■調査及び結果の概要
 

調査の背景と目的

近年、企業において短期的な収益向上だけではなく、長期的な企業価値向上に取り組む重要性が増しています。2020年には経済産業省より発表された人材版伊藤レポートにて、企業価値向上における企業の経営戦略と人材戦略の連動の重要性が提唱され、「人的資本経営」という考え方が世の中に広まっています。

また、2023年4月には東京証券取引所がPBRが低迷する企業に対して改善策を開示・実行するよう要請も行っており、企業価値向上の一つとして人的資本への投資に注目が集まっています。こうした中、人的資本への投資と企業価値向上の関連性を示す事例や研究は少ないのが現状であり、より定量的な分析が求められています。

そこでこの度、人的資本投資の重要項目の一つである従業員エンゲージメントスコア(以下ES※)と、投資指標であるROEやROIC、PBRとの定量的な関係性を明らかにすること目的に分析しました。

調査概要
・調査期間
2022年1月から2022年12月


・調査機関(調査主体)
株式会社リンクアンドモチベーション モチベーションエンジニアリング研究所

・調査対象

リンクアンドモチベーショングループが提供する従業員エンゲージメントサーベイを実施した東証スタンダード・プライム上場企業

・有効回答数(サンプル)

62社

・調査方法(集計方法、算出方法)

従業員エンゲージメントサーベイから算出されるESならびにそれらをレーティング化した「エンゲージメント・レーティング(以下ER※)」と、「ROE」「ROIC」「PBR」 といった投資指標との関係性を分析。

調査結果

・ESとROEやROIC、PBRには正の相関がみられ、
 ESが高い企業ほど ROEやROIC、PBRが高いことが示唆されました。

・ERがDランクの企業とAランクの企業では、ROEは約15.6ポイント、
 ROICは約13.4ポイントの差があることがわかりました。

・ERがDの企業はPBRが1割れである一方、ERがAの企業では80%の企業がPBRが1を上回っていました。

※企業と従業員のエンゲージメント(相互理解・相思相愛度合い)を表す指標。データベースを基に偏差値として算出されるほか、結果に応じた11段階のランク付けを「エンゲージメント・レーティング」と定義しています。また、「エンゲージメントスコア」「エンゲージメント・レーティング」は株式会社リンクアンドモチベーションの登録商標です。(登録6115383号、6167649号)

研究結果の詳細はこちらからご覧ください

https://www.lmi.ne.jp/about/me/finding/detail.php?id=35

・発行責任者のコメント

今回の調査の要点は、社内労働市場が明確に資本市場へインパクトを及ぼすという事実です。

まずはPBRを見てみると、レーティングごとに明確な相関が出ています。PBRは、株価が直接的に作用するため、経済動向などの外部環境の影響を大きく受けるのも事実です。しかし、当検証結果は、企業の解散価値とも言われるPBRにおいて、「従業員エンゲージメントの高い企業が、"非財務資本=将来の価値"に対する期待を資本市場から適切に得ることが出来ている」という解釈を後押しすると考えられます。

加えて、ROEとROIC双方への影響が顕著にデータとして顕在化していることに、より大きな意味があると捉えています。ROEは純資産のコントロールにより一定の向上が可能であるため、従業員エンゲージメントの影響範囲は狭小ではないかという意見もありますが、従業員エンゲージメントがROEの計算式の分子である純利益を構成するトップラインや支出に対して、間接的に影響を及ぼすであろうことは理解しやすいでしょう。また、比較的操作が難しいROICにおいても正の相関が顕在化したというデータからは、従業員エンゲージメントが、トップラインや販売管理費に比較的大きな影響を及ぼす一因となっている可能性が高いことが読み取れます。両指標への相関性が顕在化したことで、企業の将来性を予測する際に従業員エンゲージメントが新しく有効な示唆となるといえるでしょう。

資本市場においては、企業の「将来稼ぐ力」の可視化に苦慮してきた歴史がありますが、本検証から見えるデータは、従業員エンゲージメントが企業の成長ドライバーとしての重要項となり得る可能性を指し示していると言えます。経営においては、従業員エンゲージメント以外の変数も相互作用項として強く影響していくため、さらに細かい分析を進めていく必要はありますが、開示コスト過多に陥りがちな現状において、今回の調査が経営指標の重要項として、「企業の未来価値」の可視化における重要な一手となることを期待します。

-発行責任者-

白藤 大仁(しらふじ だいじ)
株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ 代表取締役社長

2006年 株式会社アイジャスト入社
              (同年、株式会社アイジャストは株式会社リンクアンドモチベーションにグループイン)
2015年 株式会社リンク・リレーション・エンジニアリング 企画室 室長就任
2018年 株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ 企画室 室長就任
2019年 株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ 代表取締役社長就任

icon_youtube

ページトップへ戻る